2022/12/10 ~ 2023/1/29
冷蔵庫は□かった 。
東城 信之介 | Shinnosuke Tojo
at: parcel
東京都中央区日本橋馬喰町 2-2-14 まるかビル2階
Maruka bldg 2F, 2-2-14 Nihonbashi-Bakurocho, Chuo-ku, Tokyo
Open :
Wed-Sun 14:00-19:00
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Closed : Mon, Tue
「冷蔵庫は□かった 。」
(擬人卵族のハンプティダンプティが初めて宇宙に行っていった一言)
童謡の中ではっきり明示されているわけではないが、このキャラクターは一般に擬人化された卵の姿で親しまれており、英語圏では童謡自体とともに非常にポピュラーな存在である。この童謡の最も早い文献での登場は18世紀後半のイングランドで出版されたもので、メロディはジェイムズ・ウィリアム・エリオット(英語版)がその著書『わが国の童謡と童歌』(1870年刊)において記録したものが広く用いられている。童謡の起源については諸説あり、はっきりとは分かっていない。
もともとはなぞなぞ歌であったと考えられるこの童謡とキャラクターは、ルイス・キャロルの『鏡の国のアリス』(1872年)をはじめとして、様々な文学作品や映画、演劇、音楽作品などにおいて引用や言及の対象とされてきた。アメリカ合衆国においては、俳優ジョージ・L・フォックス(英語版)がパントマイム劇の題材に用いたことをきっかけに広く知られるようになった。現代においても児童向けの題材として頻繁に用いられるばかりでなく、「ハンプティ・ダンプティ」はしばしば危うい状況や、ずんぐりむっくりの人物を指す言葉としても用いられている。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
この世界の不明瞭さを子供の頃からずっと拭えていないが、自分から生み出された作品は過程も含めてフィジカルに確認できる。それでも時間が経ち場所が変われば少なからず疑念が生まれる。parcelの空間から受けるそれはガガーリンが言った名言「地球は青かった」の様に不確定で興味深い。(この名言の由来にも諸説ある)
– 東城 信之介
parcelでは、12月10日より東城信之介 個展を開催いたします。
東城は金属の表面に細かい傷をつけ、塗料や酸化剤などの様々な素材を用いながらペインティング、研磨、転写といった手法を何度も重ねて複雑かつ繊細なレイヤーを作り出し、自身の心象風景や無意識に見えた虚像を絵画上に具体化させる作家です。また、人が残した痕跡や時間の経過を持つものに自身の表現を重ねた作品シリーズなど、存在や時間をテーマとしながら、絵画を中心に彫刻作品やインスタレーションなど多岐にわたる表現を続けています。
本展のタイトル「冷蔵庫は□かった。」は「冷蔵庫の中にいたハンプティ・ダンプティが外に出てみたら、自分が知っていたはずの世界は四角い形をしていておどろいた。」という、東城が想像したストーリーに由来しています。ハンプティ・ダンプティの起源は謎掛け詩とされていますが、元々の詩から派生した「卵の形をした人物」というキャラクター設定は他のさまざまな物語にも引用され広く知られています。多くの伝承童謡に見られるようにキャラクターだけに注目すると不可解なもので、東城は幼い頃に学校でこの物語を読んで以来、強い違和感を抱いたと言います。例えばハンプティ・ダンプティの人格と卵の殻の中身は関連しているのか、そもそも食用の卵なのか、これからひよこが生まれるはずだった卵なのか、というように疑問は尽きません。ハンプティ・ダンプティの存在自体と同様に、卵にとって快適な世界であった「冷蔵庫」は見方を変えれば全く異なった存在となり、事象を認識するための視覚を疑えば世界は不確かなものとなってしまいます。
絵画を見る時、対面するのではなく、絵画という枠を通して窓の外を覗くように内側から外の世界を見る感覚を持っていると東城は語ります。不確かな世界を描いた抽象的風景をぜひ体感いただければ幸いです。
東城 信之介
1978年長野県生まれ、2004年東京造形大学造形学部美術学科比較造形卒業、05年同大学研究生修了。自身の心象風景や無意識に見えてしまう虚像を、金属板や工業製品の表面に大小の傷やサビなどを施すことで具現化している。存在というものにフォーカスした制作スタイルは絵画にとどまらず彫刻やインスタレーション作品など多岐に展開している。2022年GUCCIでの個展「Doria Parade」や瀬戸内国際芸術祭2022に出展。「SICF18」「VOCA展2019」にはグランプリを受賞。2020年には美術館初個展「口から入って届くまで」(小海町高原美術館、長野)を開催。「Sharing the Future」(タイ・チェンマイ大学)や中国・広州でのレジデンス「対流風景 Convective Scenery 2018」(広州53美術館)に参加するなど国内外で活動している。